空き家の火災保険・地震保険——相続後の放置で見落とされるリスクを一次情報で解説
相続した実家を空き家のまま放置すると、放火・もらい火・台風・第三者賠償のリスクが残ります。空き家は「一般物件」扱いで火災保険料が割高になりやすく、地震保険は火災保険とセットでしか加入できません。失火責任法・民法717条の工作物責任まで、財務省・民法の一次情報で空き家の保険リスクを整理します。
相続した実家を「とりあえず空き家のまま」にしているとき、見落とされやすいのが 保険 です。誰も住んでいないのだから火事も起きない——と考えがちですが、実際は逆で、空き家は人が住む家よりリスクが高く、保険も入りにくい という現実があります。
この記事では、相続した実家を空き家のまま持ち続けるときの 火災保険・地震保険・第三者賠償 のリスクを、財務省・民法の一次情報ベースで整理します。保険は「持ち続けるコスト」の一部であり、空き家の維持費を考えるうえで避けて通れません。
なぜ空き家にも保険が必要なのか——4つのリスク
人が住まなくても、建物がある限りリスクは残ります。
- 火災——放火・もらい火・電気配線の劣化による出火。空き家は人目が少なく、放火の標的になりやすい
- 風水害——台風による屋根の飛散、豪雨による浸水、落雷
- 第三者賠償——老朽化した外壁・瓦・塀が落下し、通行人や隣家に損害を与える
- 管理不全による劣化——誰も気づかないまま被害が拡大する
特に注意したいのが 失火責任法 です。日本では、軽過失の火災で隣家に燃え移っても、原則として失火元に損害賠償を請求できません(重大な過失がある場合は別)。つまり もらい火で実家が燃えても、自分の火災保険に入っていなければ補償は受けられない ということです。
空き家は「一般物件」扱いになることがある
火災保険では、建物は用途によって区分されます。人が居住している建物は「住宅物件」ですが、誰も住んでいない空き家は「住宅物件」ではなく「一般物件」として扱われることがあります。
その結果、次のようなことが起こり得ます(取扱いは保険会社により異なります)。
- 保険料が住宅物件より割高になる
- 補償内容や契約できるプランが制限される
- 保険会社によっては新規の引受を断られる
「相続したら、まず親が掛けていた火災保険の契約状況を確認する」ことが第一歩です。契約者(被相続人)の死亡後も自動で引き継がれるわけではないため、名義変更や契約の見直しをしないまま無保険状態になっている ケースが少なくありません。
火災保険でカバーされるもの・されないもの
火災保険は「火災」だけの保険ではなく、商品によって風災・水災・落雷・破損などをカバーします。一方で、地震を原因とする火災・損害は火災保険では補償されません。
- 火災保険でカバー(商品による): 火災、落雷、破裂・爆発、風災・雪災、水災 など
- 火災保険でカバーされない: 地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・流失・埋没
地震大国の日本では、この「地震を原因とする損害は火災保険対象外」という点が大きな穴になります。それを埋めるのが地震保険です。
地震保険——火災保険とセットでしか入れない
地震保険には、火災保険と別単独では加入できません。財務省「地震保険制度の概要」によると、制度の要点は次の通りです。
- 地震保険は火災保険に付帯する方式で契約する(火災保険への加入が前提)。すでに火災保険に入っていれば契約期間の途中からでも加入できる
- 地震保険の保険金額は、火災保険金額の30%〜50%の範囲内 で設定する
- ただし上限は 建物5,000万円・家財1,000万円
- 地震保険は、保険会社が負う地震保険責任を 政府が再保険 することで成り立つ公共性の高い制度
「火災保険の半分までしか入れない」という設計は、地震被害が広域・巨大になり得るため、保険会社の担保力と国の財政の限度から定められています。空き家でも、地震火災まで備えるなら火災保険+地震保険のセットが基本 になります。
第三者への賠償リスク——建物が他人を傷つけたら
空き家の保険で最も見落とされるのが 第三者への賠償 です。
老朽化した実家の外壁・瓦・ブロック塀が崩れ、通行人にケガをさせたり隣家の車を壊したりすると、所有者が損害賠償責任を問われます。民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)は、土地の工作物の設置・保存に瑕疵があって他人に損害が生じた場合の責任を定めており、占有者が損害防止に必要な注意をしていたときは、所有者が賠償責任を負う(所有者は免責されにくい)構造になっています(e-Gov法令検索 民法)。
遠方に住んでいて管理が行き届かない実家ほど、このリスクは現実的です。火災保険に付帯する個人賠償責任補償や、施設賠償責任保険などで備える方法がありますが、空き家の場合は補償対象になるか保険会社への確認が必要です。
なお、管理不全のまま放置して 特定空家等 に認定されると、保険とは別に 固定資産税が最大6倍 になります(国土交通省ガイドライン)。
保険料を払い続けるより、リスクごと手放す選択
ここまで見たとおり、空き家を持ち続ける限り、火災・風水害・賠償のリスクと保険料は 毎年かかり続けます。しかも空き家は一般物件扱いで保険料が割高になりやすい。
根本的な解決は、リスクと保険料ごと建物を手放すこと です。
- 売る——所有権を手放せば、火災・賠償リスクと保険料からすべて解放される(実家を相続して売る完全ガイド)
- 貸す——人が住めば管理の目が入る。ただし貸主としての保険は必要(相続した実家を貸す前に知るべきこと)
- 解体——建物がなくなれば火災・工作物責任のリスクは消える。ただし更地は固定資産税が上がる(解体後の更地活用)
「保険に入って持ち続ける」か「リスクごと手放す」か。これは 4択(売る・貸す・住む・壊す) の判断そのものです。
よくある質問
Q. 親が掛けていた火災保険はそのまま使えますか? A. 契約者が亡くなった後も自動で引き継がれるわけではありません。名義変更や契約見直しが必要で、空き家になったことで「一般物件」への切替や条件変更が生じる場合があります。まず保険証券を探し、保険会社に相続後の扱いを確認してください。
Q. 空き家でも地震保険に入れますか? A. 火災保険に加入できることが前提です。空き家は一般物件扱いで火災保険自体に制限がかかることがあるため、保険会社への確認が必要です。
Q. もらい火で実家が燃えたら、火元に弁償してもらえますか? A. 失火責任法により、軽過失の火災では原則として失火元に損害賠償を請求できません(重大な過失がある場合は別)。自分の火災保険で備えるのが基本です。
Q. 古い実家の塀が倒れて人がケガをしたら誰の責任ですか? A. 民法717条により、建物・塀などの工作物の瑕疵で他人に損害が生じた場合、最終的に所有者が賠償責任を負うことが多くなります。老朽化した空き家ほどこのリスクは高まります。
家じまいくん——「保険を払い続ける」コストも含めて4択を比較
空き家の保険料は、固定資産税や管理費と並ぶ「持ち続けるコスト」の一部です。家じまいくんは12問5分で、売る・貸す・住む・壊すの4択それぞれの概算手残りをレンジ提示します。「保険に入って持ち続ける」前提が本当に最適かを、他の選択肢と並べて確認してください。
空き家を「持ち続ける」コスト、4択と比べると——12問5分で試算
保険料・固定資産税・管理費まで含む「持ち続けるコスト」と、売る・貸す・壊した場合の手残りをレンジで提示。
無料・登録不要・所要時間 約5分。
まとめ
相続した実家を空き家のまま持ち続けると、火災・風水害・第三者賠償のリスクと保険料が毎年かかり続けます。空き家は一般物件扱いで火災保険料が割高になりやすく、地震火災に備えるなら火災保険+地震保険(火災保険金額の30〜50%・建物5,000万円/家財1,000万円が上限)のセットが基本。老朽化した建物は民法717条の工作物責任も生じます。まず親の保険契約を確認し、無保険状態を解消したうえで、保険を払い続けるか、リスクごと売る・貸す・解体で手放すかを4択で比較してください。
関連記事: 売る・貸す・住む・壊すの4択判定 / 空き家の維持費は年間いくら / 特定空家リスク / 固定資産税6倍の真実 / 実家を相続して売る完全ガイド / 相続した実家を貸す前に知るべきこと / 遠方の実家を相続したらどうする / 解体後の更地活用
本記事は2026年5月時点の制度に基づきます。火災保険・地震保険の補償内容・引受条件・保険料は保険会社・商品・物件の状況によって異なるため、必ず保険会社・代理店への確認で個別に判断してください。本記事は法的助言を目的としたものではありません。
実家を相続したら、まず「最初の地図」を
売る・貸す・住む・壊すの4選択肢を、12問5分で横断比較。
あなたの実家の場合、どの選択肢が最も合っているのかをデータで提示します。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 税務・法務・不動産取引に関する個別具体的な助言を行うものではありません。 個別のご事情に応じた判断は、税理士・司法書士・弁護士・宅地建物取引士等の有資格者にご相談ください。 また、法令・通達は本記事公開後に改正される可能性があります。最新情報は各官公庁のWebサイトをご確認ください。
← コラム一覧に戻る