相続した実家を貸す前に知るべきこと——リフォーム費・利回り・税金・契約形態
相続した実家を貸すと家賃収入が入りますが、その前にリフォーム費200〜500万円、不動産所得の確定申告、管理委託料(家賃の5〜10%)、空室・滞納リスクを知っておく必要があります。表面利回りと実質利回りの違い、「いずれ売りたい」なら定期借家を選ぶ理由まで、国税庁の一次情報で整理しました。
相続した実家を「貸す」のは、思い出のある家を手放さずに家賃収入を得られる魅力的な選択肢に見えます。ただし 貸すには先に投資(リフォーム)が必要 で、家賃が入れば 確定申告の義務 も生じます。「貸せば収入になる」という入口だけで判断すると、想定外の出費とリスクに後から気づくことになります。
この記事では、相続した実家を貸す前に知っておくべきことを「リフォーム費 → 収支構造 → 税金 → 契約形態 → リスク」の順に、国税庁・法務省の一次情報ベースで整理します。「貸す」は 4択(売る・貸す・住む・壊す) のうち、初期投資が大きく、長期で回収する選択肢です。
貸す前の絶対条件——相続登記とリフォーム
相続登記が完了していないと、貸主として正式な契約を結べません。 2024年4月から相続登記は義務化されており(法務省)、貸す・売るどちらにしても名義変更は必須です。
登記が済んだら、次の壁が リフォーム です。築年数が経った実家をそのまま貸せることは少なく、最低限の修繕が必要になります。
| リフォーム範囲 | 目安費用(業界水準) |
|---|---|
| 内装一新・水回り総交換 | 200〜400万円 |
| フルリノベーション | 500〜1,000万円超 |
「貸す」は、この初期投資を 何年で家賃から回収できるか の計算がすべての出発点になります。
「貸す」の収支構造——表面利回りと実質利回り
利回りには2種類あり、混同すると判断を誤ります。
- 表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 投資額(物件価値+リフォーム費)
- 実質利回り =(年間家賃収入 − 年間経費)÷(投資額+初期費用)
広告やシミュレーションで目立つのは表面利回りですが、実際の手残りは経費を引いた実質利回りで決まります。固定資産税・管理委託料・修繕積立・損害保険料を差し引くと、表面利回りより数ポイント下がるのが普通です。
具体的な試算は 賃貸転用の利回り計算ツール と 2026年版 空き家の賃貸転用データ で確認できます。
必要経費として認められるもの(不動産所得の確定申告)
家賃収入は 不動産所得 として確定申告が必要です。不動産所得は次の式で計算します(国税庁No.1370)。
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費
必要経費にできる主なものは次の通りです。
- 固定資産税・都市計画税
- 修繕費(原状回復・設備交換など)
- 減価償却費(建物の取得費を耐用年数で按分した分)
- 管理委託料(不動産管理会社への委託費)
- 損害保険料(火災保険・地震保険)
- 入居者募集の仲介手数料
- ローンがある場合の支払利子 など
経費を漏れなく計上できるかで手残りが変わります。判断に迷う場合は税理士に確認してください。
普通借家と定期借家——「いずれ売りたい」なら契約形態に注意
実家を貸すうえで見落とされがちなのが 賃貸借契約の種類 です。
| 普通借家契約 | 定期借家契約 | |
|---|---|---|
| 契約の更新 | 原則更新される | 期間満了で終了(再契約は任意) |
| 貸主からの解約 | 「正当事由」が必要でハードルが高い | 期間満了で確実に明け渡し |
| 家賃水準 | 相場どおり | やや低めになりやすい |
| 向くケース | 長期で貸し続ける | いずれ売却・自己利用したい |
普通借家契約で貸すと、貸主の都合で簡単には解約できません。「数年は貸すが、いずれ売りたい・自分や子が住むかもしれない」と考えているなら、定期借家契約を検討する のが安全です。契約形態は入居後に変更できないため、貸し出す前に決める必要があります。
貸す3つのリスク
- 空室リスク——借り手がつかなければ家賃収入はゼロ。築古戸建ては需要が読みにくく、半年〜1年空室が続けば回収計画が崩れる
- 滞納リスク——家賃が支払われないと収入が止まる。家賃保証会社の利用や審査でリスクを下げる
- 想定外の修繕——入居中の設備故障・退去後の原状回復で、計画外の出費が発生する
これらを織り込むと、表面利回りの数字どおりには進まないのが現実です。
「貸す」が向くケース・向かないケース
- 向くケース: 駅徒歩圏・単身者ニーズあり等で賃貸需要が見込める/リフォーム費を投資できる資金余裕がある/長期保有を許容できる
- 向かないケース: 賃貸需要が薄い立地/初期投資を回収する前に売りたい/空室・滞納のストレスを避けたい
賃貸需要が薄い、または早く現金化したいなら 売る の方が合理的なことが多いです。判断は 4択の横断比較 から始めてください。
よくある質問
Q. リフォームせずにそのまま貸せませんか? A. 状態が良ければ可能ですが、築古の実家は最低限の修繕なしでは借り手がつきにくいのが一般的です。「現状渡し」で安く貸す方法もありますが、家賃も下がります。
Q. 家賃収入がいくらから確定申告が必要ですか? A. 不動産所得が生じれば申告が必要です(給与所得者で不動産所得が年20万円以下など一定の場合は例外あり)。詳しくは税理士・税務署に確認してください。
Q. 親が住んでいた家具をそのまま使って貸せますか? A. 残置物の扱いは入居者と相談になります。多くは撤去(遺品整理)してから貸し出すか、家具付き賃貸として明示します。
Q. 兄弟共有の実家を貸せますか? A. 共有物の賃貸は共有者の合意が必要です。先に 遺産分割 で方針を揃えてください。
家じまいくん——「貸す」と「売る」、手残りはどちらが大きい?
「貸す」は初期投資が大きく、回収まで時間がかかる選択肢です。立地・築年数・リフォーム費・家賃相場によっては、売る の方が手残りが大きいこともあります。家じまいくんは12問5分で、貸す・売る・住む・壊すの4択それぞれの概算手残りを同じ画面に並べてレンジ提示 します。「貸す」に踏み切る前に、一度4択を横断比較してください。
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まとめ
相続した実家を貸す前に押さえるべきは「リフォーム費(200〜500万円)→ 実質利回りでの収支判断 → 不動産所得の確定申告 → 契約形態(普通借家か定期借家か)→ 空室・滞納・修繕の3リスク」です。最大の落とし穴は、表面利回りの数字だけを見て、経費・空室・契約形態を織り込まずに貸し始めてしまう こと。「貸せば収入」と入口だけで決めず、売る・住む・壊すと並べて手残りを比較してから判断してください。
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関連リサーチ: 2026年版 空き家の賃貸転用データ / 関連ツール: 賃貸転用の利回り計算
本記事は2026年5月時点の制度・標準的な相場感に基づきます。実際のリフォーム費・利回り・税額は物件・地域・契約条件によって変動するため、必ず複数業者の見積と税理士への確認で確定させてください。本記事は法的・税務的助言を目的としたものではありません。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 税務・法務・不動産取引に関する個別具体的な助言を行うものではありません。 個別のご事情に応じた判断は、税理士・司法書士・弁護士・宅地建物取引士等の有資格者にご相談ください。 また、法令・通達は本記事公開後に改正される可能性があります。最新情報は各官公庁のWebサイトをご確認ください。
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