実家を相続して売る——流れ・期間・費用・税金を一次情報で整理する完全ガイド
相続した実家を売ると決めたら、まず相続登記、次に残置物処分・媒介契約・売り出し・決済の順。売り出しから決済まで3〜12ヶ月、仲介手数料は売却額×3%+6万円+税、空き家3,000万円特別控除と取得費加算で譲渡所得税を抑える方法まで、法務省・国税庁の一次情報で7ステップ整理しました。
相続した実家を「売る」と決めても、いきなり不動産会社に駆け込むのは早すぎます。売却には 相続登記という絶対的な前提 があり、その後も残置物処分・媒介契約・売り出し・決済と段階が続きます。途中の判断を飛ばすと、契約直前で止まったり、税金で数百万円損したりします。
この記事では、相続した実家を売るまでの流れを 7ステップのロードマップ で整理し、各段階の 期間・費用・税金 を法務省・国税庁の一次情報ベースで解説します。「売る」は 4択(売る・貸す・住む・壊す) のうち最も「終わり」が明確な選択肢ですが、手順を知らないと時間も費用も膨らみます。
売却までの全体像——7ステップのロードマップ
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| ① 相続登記 | 名義を被相続人から相続人へ変更 | 1〜3ヶ月 |
| ② 残置物処分・現況把握 | 家財撤去・境界・建物状態の確認 | 1〜2ヶ月 |
| ③ 媒介契約 | 不動産会社の査定・選定・契約 | 2〜4週間 |
| ④ 売り出し〜売買契約 | 広告・内見対応・価格交渉 | 1〜10ヶ月 |
| ⑤ 決済・引渡し | 残代金受領・所有権移転・鍵渡し | 1〜2ヶ月 |
| ⑥ 確定申告 | 譲渡益が出た場合(翌年2〜3月) | — |
①〜⑤を合わせると 早くて4ヶ月、長いと1年以上。「すぐ現金化したい」と思っても、相続登記と残置物処分で最低でも数ヶ月かかる前提で計画してください。
ステップ1: 相続登記——売却の絶対的な前提
実家の名義が被相続人(亡くなった方)のままでは、売買契約を結べません。 買主への所有権移転登記ができないためです。
2024年4月から相続登記は義務化され、不動産の取得を知った日から 3年以内 の申請が必須、違反すると10万円以下の過料の対象です(法務省「相続登記の申請が義務化されました」)。売却するなら、この義務とは関係なく登記は必須手続きになります。
- 遺産分割協議が必要: 相続人が複数いる場合、誰が相続するかを協議で確定し、遺産分割協議書を作成する
- 必要書類: 被相続人の出生〜死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、固定資産評価証明書、遺産分割協議書 等
- 登録免許税: 固定資産税評価額 × 0.4%(国税庁No.7191)
- どうしても協議がまとまらない場合、相続人申告登記で義務だけは履行できるが、これは売却の前提にはならない(持分の確定が必要)
兄弟姉妹で意見が割れているなら、売却の検討より先に 兄弟間の遺産分割 を解決してください。割れたままでは誰も売る判断ができません。
ステップ2: 残置物処分・現況把握
登記と並行して、家の中身(残置物)と土地・建物の現況 を把握します。
- 残置物処分: 家具・家電・生活用品の撤去。標準的な戸建てで30〜100万円程度(物量・地域で変動)。詳細は 実家の遺品整理・片付け を参照
- 境界の確認: 隣地との境界が未確定だと、買主から測量・境界確定を求められることが多い。測量費は数十万円規模
- 建物状態の確認: 雨漏り・傾き・シロアリ等は「告知事項」になり、隠すと契約後にトラブルになる
- 古家付き土地 vs 更地: 築古戸建ては「古家付き土地」として売るか、解体して更地で売るかを選ぶ。解体費は木造30坪で約120〜180万円(2026年版 空き家解体費用 全国相場)
遠方に住んでいて現地確認が難しい場合は、遠方の実家を相続したらどうする も参考にしてください。
ステップ3: 媒介契約——不動産会社の選び方
売却を不動産会社に依頼する契約を「媒介契約」と呼びます。3種類あります。
| 種類 | 複数社依頼 | 自己発見取引 | 報告義務 |
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | できる | できる | なし |
| 専任媒介 | できない | できる | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | できない | できない | 1週間に1回以上 |
最初に複数社へ査定を依頼し、価格の根拠を比較 してから契約先を決めるのが鉄則です。1社の査定額だけを見て決めると、相場が分からないまま安く売る・売れ残るリスクがあります。査定額が高い会社が良い会社とは限りません(契約欲しさに高値を出すケースもある)。
ステップ4: 売り出し〜売買契約(期間の現実)
売り出しから買主との売買契約まで、ここが最も期間の読めない段階 です。
- 都市部の需要が厚いエリアは数週間〜数ヶ月
- 地方の築古戸建ては、相場の50〜70%まで下げないと動かないことも珍しくない
- 売り出し価格が高すぎると内見が入らず、結局値下げ→長期化という流れになりがち
買主が見つかったら売買契約を結び、手付金を受領します。売買契約書には 印紙税(契約金額に応じて数千円〜数万円)がかかります。
地方で「いくら下げても売れない」状況なら、相続した田舎の実家を0円以下で手放す方法(国庫帰属・空き家バンク等)も選択肢に入ります。
ステップ5: 決済・引渡し
残代金の受領・所有権移転登記・鍵の引渡しを同日に行います。
- 仲介手数料: 売却額に応じた媒介報酬の上限は 宅地建物取引業法施行規則 で定められ、売却額400万円超の部分は「売却額 × 3% + 6万円 + 消費税」。例えば3,000万円で売れた場合は約105.6万円
- 一般に契約時と決済時の2回に分けて支払う
- 抵当権が残っている場合は、決済時に売却代金で完済して抹消登記を行う
売却にかかる費用の全体像
3,000万円で売却するケースの目安です(物件・地域で変動)。
| 費目 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 約105.6万円(売却額×3%+6万円+税) |
| 相続登記の登録免許税 | 評価額 × 0.4% |
| 印紙税(売買契約書) | 数千円〜数万円 |
| 残置物処分 | 30〜100万円 |
| 抵当権抹消登記 | 1〜数万円(司法書士報酬含む) |
| 測量・境界確定 | 数十万円規模(必要な場合) |
| 解体費(更地で売る場合) | 木造30坪 約120〜180万円 |
| 譲渡所得税 | 譲渡益が出た場合に別途(下記) |
売却後の税金——譲渡所得税と2つの特例
売却益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
- 取得費: 被相続人が買った時の購入代金等を引き継ぐ。取得費が分からない場合は「概算取得費(譲渡価額の5%)」を使えるが、その分課税対象が大きくなりやすい
- 所有期間: 被相続人の取得日を引き継ぐため、多くのケースで長期譲渡所得(所有5年超)の扱いになる。税率の詳細は 3,000万円特別控除の記事 を参照
譲渡所得税を抑える代表的な特例が2つあります。
特例1: 空き家の3,000万円特別控除(国税庁No.3306)
被相続人が1人で居住していた家屋などの要件を満たすと、譲渡所得から 最大3,000万円を控除 できます(国税庁No.3306)。1981年5月31日以前の建築・耐震改修または取壊しなど7つの要件があり、期限は 相続発生日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで の売却。詳細は 空き家の3,000万円特別控除 で解説しています。
特例2: 取得費加算の特例(国税庁No.3267)
相続税を納めた場合、相続開始の翌日から 相続税の申告期限の翌日以後3年以内 に売却すれば、納めた相続税の一部を取得費に加算できます(国税庁No.3267)。
空き家3,000万円特別控除と取得費加算の特例は重複して適用できません。 どちらが有利かを試算して選びます。判断材料は 空き家3,000万円控除 適用判定ツール でも確認できます。
「売る」と決める前に並べておきたい4択
「売る」は出口が明確ですが、立地・築年数によっては 貸す の方が手残りが大きいこともあります。逆に売れ残るくらいなら早めの解体が有利なケースもあります。売却に動き出す前に、一度だけ 売る・貸す・住む・壊すの4択 を横断比較 しておくと、後悔の確率が大きく下がります。
よくある質問
Q. 相続登記をしないまま売却の話を進められますか? A. いいえ。買主への所有権移転ができないため、登記完了が売買契約の前提です。査定や相談は登記前でも可能ですが、契約・決済はできません。
Q. 兄弟3人の共有名義のまま売れますか? A. 共有者全員の合意があれば共有のまま売却できますが、1人でも反対すると売却自体が止まります。先に 遺産分割 で方針を揃えるのが現実的です。
Q. 売却益が出なければ税金はかかりませんか? A. 譲渡所得がマイナス(損失)なら譲渡所得税はかかりません。ただし確定申告で判定するため、特例を使う場合は譲渡益ゼロでも申告が必要です。
Q. すぐに現金が必要です。最短で売れますか? A. 相続登記と残置物処分だけで数ヶ月かかります。「不動産買取(業者が直接購入)」なら期間は短縮できますが、仲介で売るより価格は下がる傾向です。
家じまいくん——売る前に「売っていくら手元に残るか」を知る
ここまでは標準的な流れです。実際の手残りは、立地・築年数・延床面積・売却見込額・特例の適用可否で大きく変わります。家じまいくんは12問5分で 「売った場合の概算手残り」を、貸す・住む・壊すと並べてレンジ提示 する「最初の地図」です。業者査定・税理士相談に行く前に、4択を並べて全体像をつかむ——これが結果的に最大の費用最適化です。
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まとめ
相続した実家を売る流れは「相続登記 → 残置物処分 → 媒介契約 → 売り出し → 決済 → 確定申告」。最大の落とし穴は2つあります。1つは 相続登記を後回しにして売却スケジュールが崩れる こと。もう1つは 特例(3,000万円控除・取得費加算)を知らずに譲渡所得税を払いすぎる こと。どちらも事前準備で防げます。「とりあえず不動産会社へ」の前に、本記事の7ステップと税金の特例を押さえ、4択を一度横断比較してから動き出してください。
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関連リサーチ: 2026年版 空き家解体費用 全国相場と47県補助金一覧
本記事は2026年5月時点の制度・標準的な相場感に基づきます。実際の費用・期間・税額は物件・地域・不動産会社・適用要件によって変動するため、必ず複数業者の査定と税理士・司法書士への確認で確定させてください。本記事は法的・税務的助言を目的としたものではありません。
実家を相続したら、まず「最初の地図」を
売る・貸す・住む・壊すの4選択肢を、12問5分で横断比較。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 税務・法務・不動産取引に関する個別具体的な助言を行うものではありません。 個別のご事情に応じた判断は、税理士・司法書士・弁護士・宅地建物取引士等の有資格者にご相談ください。 また、法令・通達は本記事公開後に改正される可能性があります。最新情報は各官公庁のWebサイトをご確認ください。
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