実家じまいの費用相場はいくら? 解体・残置物処分・登記・売却まで4選択肢別の総額を一次情報で整理
相続した実家を「壊す・売る・貸す・住む」のいずれを選んでも費用が発生します。解体費用(木造30坪150〜250万円)、残置物処分(30〜80万円)、相続登記(評価額の0.4%)、売却仲介手数料、賃貸転用リフォームまで、4選択肢別の総額レンジを国交省・国税庁・法務局の一次情報に基づき整理しました。
「相続した実家を、結局いくらでどうにかできるんだろう?」——これは家じまいくんに来られる方が最初に持つ問いです。
実家じまいの費用は、選ぶ選択肢(売る・貸す・住む・壊す)によって大きく変わります。さらに、相続発生後には相続登記費用や残置物処分といった、選択肢に関係なく発生する共通費用もあります。
この記事では、「壊す」「売る」「貸す」「住む」の4選択肢別の総額レンジを、国土交通省・国税庁・法務局の一次情報と業界の標準的な相場感に基づき整理します。最終的に自分のケースで概算予算を立てられる状態を目指します。
【3行サマリ】実家じまい費用の全体像
- 共通費用(4選択肢のどれを選んでも発生): 相続登記 + 残置物処分 = 35万円〜100万円程度
- 「壊す」追加費用: 解体費用(木造30坪 150〜250万円)+ アスベスト調査・除去(必要時 +50〜数百万円)
- 「売る」追加費用: 仲介手数料(宅建業法上限で売却額の3% + 6万円 + 消費税)+ 譲渡所得税(3000万円特別控除で抑制可)
- 「貸す」追加費用: リフォーム(200〜500万円)+ 管理委託(家賃の5〜10%/月)
- 「住む」追加費用: 維持費(固定資産税 + 修繕積立 = 年20〜40万円)
それぞれを順に見ていきます。
共通費用 — 4選択肢のどれを選んでも発生する2つ
共通費用1: 相続登記(必須・3年以内・義務化済)
相続した不動産は、所有権移転登記(相続登記)が法律上必須です。2024年4月から義務化されており、3年以内に申請しないと過料10万円以下のリスクがあります。
費用の内訳
| 項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 評価額の 0.4%(出典: 国税庁 No.7191) |
| 司法書士報酬(依頼時) | 5万〜10万円(不動産1件あたり) |
| 戸籍・住民票・印鑑証明等取得費 | 5,000〜2万円 |
| 合計 | 評価額1,200万円なら 約10〜20万円 |
自分でやれば登録免許税のみ
司法書士に依頼せず自分で法務局に申請すれば、実費は登録免許税のみで済みます(評価額1,200万円なら4.8万円)。手間との相談です。
詳細は別記事 相続登記の義務化はいつから? を参照。
共通費用2: 残置物処分(家具・家電・思い出の品)
実家には両親の家具・家電・本・写真・趣味の道具などが大量に残っているのが普通です。これを片付けないと、売却・賃貸・解体のいずれも進みません。
費用の目安(3LDK/4LDK 戸建て想定)
| 物量 | 業者依頼費用 |
|---|---|
| 軽め(家族で大半処分済・残り2t車1台分) | 15〜30万円 |
| 標準(一般的な戸建て・4t車1〜2台分) | 30〜60万円 |
| 多い(収集癖・倉庫あり・4t車3台超) | 60〜100万円超 |
コスト圧縮のコツ
- 家族で1〜2回片付けに行く(思い出の品の選別 + 軽トラ1台分処分)→ 業者費用を半減できる
- 遺品整理士のいる業者に依頼すると貴重品見落としリスクが下がる
- 特殊清掃が必要なケース(孤独死・多年放置)は別費用 +20〜100万円
業者選定時は「廃棄物処理業許可」を持つ業者か、必ず確認してください(出典: 環境省)。無許可業者は不法投棄の温床です。
「壊す」を選ぶ場合の追加費用
更地化して売却・別用途活用する場合の追加費用です。
解体費用の相場
国土交通省によれば、解体工事業は登録制(許可制)です。建物構造と床面積で費用が決まります。
構造別 坪単価レンジ
| 構造 | 坪単価レンジ | 30坪建物の総額目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 3〜5万円/坪 | 90〜150万円 |
| 軽量鉄骨造 | 4〜7万円/坪 | 120〜210万円 |
| 重量鉄骨造 | 6〜8万円/坪 | 180〜240万円 |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 6〜10万円/坪 | 180〜300万円 |
上振れ要因(追加費用が発生するケース)
- アスベスト含有(1981年以前築は要調査)→ 調査費 5〜10万円 + 除去費 数十万〜数百万円
- 狭小道路(4m未満)→ 重機が入らず手壊し → +30〜50%
- 隣地接近(境界からの距離が近い)→ 養生・防音シート強化 → +10〜20万円
- 地中埋設物(古井戸・浄化槽・基礎残存)→ +20〜100万円
- 駐車困難(道路上にダンプ駐車不可)→ 仮置場費用 +10〜20万円
解体補助金の活用
多くの自治体が老朽空き家解体補助金を用意しています(出典: 国交省 空き家対策総合支援事業)。
| 補助金タイプ | 補助率・上限 |
|---|---|
| 老朽危険空家除却支援 | 解体費の 1/3〜1/2・上限 50〜100万円 |
| 不良住宅除却 | 解体費の 1/4〜1/2・上限 30〜80万円 |
| 跡地利活用条件付き | 補助額が増える代わりに10年間の用途制限 |
申請窓口は市区町村の住宅課・空き家対策課。事前申請が必須で、解体着工後の遡及申請は不可です。
解体後の固定資産税の落とし穴
解体して更地にすると、住宅用地特例(1/6)が消滅して固定資産税の課税標準額が満額になります。30坪程度の宅地なら、年6万円が年36万円になることも。
ただし、解体後すぐ売却すれば、売却日までの数ヶ月分の負担で済みます。長期保有予定なら、解体時期と売却時期の調整が重要です。
「売る」を選ぶ場合の追加費用
仲介手数料(最大の費用)
宅地建物取引業法施行規則 第15条で上限が定められています。
| 売却額 | 仲介手数料の上限(消費税抜き) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超の部分 | 3% |
速算式
400万円超の物件は次の速算式が使えます。
仲介手数料 = 売却額 × 3% + 6万円
売却額別の仲介手数料目安(消費税10%込み)
| 売却額 | 仲介手数料 |
|---|---|
| 1,000万円 | 約 39.6万円 |
| 2,000万円 | 約 72.6万円 |
| 3,000万円 | 約 105.6万円 |
| 5,000万円 | 約 171.6万円 |
譲渡所得税(売却益への課税)
売却益が出れば譲渡所得税が課されます。
- 長期譲渡(5年超): 約20.315%
- 短期譲渡(5年以下): 約39.63%
- 相続物件は通常、被相続人の所有期間を引き継ぐため長期譲渡
3,000万円特別控除が使えれば譲渡益から3,000万円控除できます(適用要件は別記事参照)。取得費加算の特例とは選択適用です。
売却時のその他の費用
- 印紙税(売買契約書): 1,000万円超〜5,000万円以下なら 1万円(軽減措置適用時、出典: 国税庁 No.7140)
- 登記費用(抵当権抹消等が必要な場合): 1〜3万円
- 境界確定測量(必要時): 30〜80万円
「貸す」を選ぶ場合の追加費用
賃貸転用は初期投資が大きい代わりに、長期で家賃収入を得られる選択肢です。
リフォーム費用
築年数・劣化状況・賃貸グレードで大きく変動します。
| リフォームレベル | 費用目安 | 期待家賃水準 |
|---|---|---|
| 最低限(クリーニング・水回り部分補修) | 50〜100万円 | 周辺相場の70〜80% |
| 標準(内装一新・水回り総交換) | 200〜400万円 | 周辺相場 |
| フルリノベ(耐震・断熱・間取り変更) | 500〜1,000万円超 | 周辺相場の110〜130% |
賃貸経営の運用コスト
| 項目 | 月額目安 |
|---|---|
| 管理委託料(管理会社依頼時) | 家賃の 5〜10%(一般的に5〜8%) |
| 修繕積立(自己積立) | 家賃の 5〜10% を内部留保 |
| 固定資産税(住宅用地特例継続) | 月額換算 5,000〜2万円 |
| 火災保険(賃貸用) | 月額 1,500〜3,000円 |
「DIY 型賃貸借」という選択肢
借主が自己負担で改修できる契約形態。初期リフォーム費用ゼロで貸し出せる代わりに、家賃を相場の50〜70%に設定するのが一般的です。
国土交通省は「DIY 型賃貸借に関する契約書式例」を公開しており、トラブル回避のための標準書式が活用できます。
「住む」を選ぶ場合の追加費用
自己居住・親族居住に切り替える選択肢。初期費用は最小だが、維持費が継続的にかかるのが特徴です。
引越し・初期片付け
- 引越し費用: 30〜100万円(距離・荷物量による)
- 必要最小限の修繕(雨漏り・水回り): 20〜100万円
- 生活インフラ復旧(電気・水道・ガス開栓): 1〜5万円
維持費の年額目安
| 項目 | 年額目安 |
|---|---|
| 固定資産税(住宅用地特例継続) | 5〜15万円 |
| 修繕積立(築古は早めの大修繕に備える) | 10〜20万円 |
| 火災保険・地震保険 | 3〜5万円 |
| 光熱費(住人増減で変動) | 15〜30万円 |
| 合計 | 年33〜70万円 |
「住む」のメリット
- 特定空家認定リスクがほぼゼロ(認定回避を継続的に実現)
- 売却時にマイホーム特例(3,000万円控除)が将来的に使える可能性
- 家族の判断保留期間として機能する
4選択肢別 総額シミュレーション
仮想ケース「築40年・木造2階建て30坪・関東郊外・評価額1,200万円・売却見込3,000万円」での総額レンジを整理します。
ケース別 試算サマリ
| 選択肢 | 初年度総額(共通費用込み) | 5年後の累積差額 |
|---|---|---|
| 壊す + 売る(更地売却) | 解体200 + 残置50 + 登記10 + 仲介100 = 約360万円支出 / 売却収入3,000万円 → 手残り 約2,640万円 | |
| 建物付き売却 | 残置50 + 登記10 + 仲介90 = 約150万円支出 / 売却収入3,000万円 → 手残り 約2,850万円(買主側で解体する分は減額交渉あり) | |
| 賃貸転用 | リフォーム300 + 残置50 + 登記10 = 360万円初期支出 / 月額家賃8万円 = 年96万円 → 5年累積収入 約480万円・初期回収 約1.3倍 | |
| 自己居住維持 | 引越し50 + 修繕30 + 残置部分整理20 = 100万円初期支出 / 維持費年50万円 → 5年で 350万円支出 |
試算の前提と限界
- 建物付き売却は買主が解体目的の場合、解体費分を差し引いた価格交渉となる(=実質「壊す + 売る」と同水準になりやすい)
- 賃貸転用は空室・滞納リスクを織り込めば、5年回収はかなり楽観的試算
- 数字はあくまで目安であり、最終的には業者査定と税理士試算で確定するべき性質のもの
補助金・税制優遇のチェックリスト
費用負担を抑えるための公的支援制度です。
解体・改修補助金
- 空き家対策総合支援事業(国交省)
- 自治体個別の老朽危険空家除却補助
- セーフティネット住宅改修補助(賃貸転用時)
税制優遇
- 3,000万円特別控除(被相続人居住用財産・売却時)
- 取得費加算の特例(相続税を取得費に加算・3000万特控とは選択適用)
- 小規模宅地等の特例(相続税申告時・要件あり)
申請のコツ
- 解体着工前に必ず自治体に相談(事後申請は基本不可)
- 複数の見積を取る(業者によっては補助金活用に不慣れなケースあり)
- 売却前に税理士で試算(特控 vs 取得費加算の選択を誤ると数百万円の損失)
家じまいくんの位置付け — 4選択肢の概算予算を1度に提示
実家じまいの費用は選ぶ選択肢で大きく変わるため、「いくらかかるか」を答えるには「何を選ぶか」を先に決める必要があります。
家じまいくんは、12問5分で**売る・貸す・住む・壊すの4選択肢それぞれの概算手残り(または支出)をレンジで提示する「最初の地図」**です。
- 立地・築年数・延床面積から解体費用と土地相場を試算
- 3000万円特別控除適用可否で売却時の手残りが変わる
- 賃貸転用時の家賃相場と回収期間を概算
- 「住む」維持コストと特定空家リスクを比較
業者査定(売却額のみ)や税理士相談(税金のみ)に行く前に、4選択肢を並べて比較すると、相談の中身が一気に深まります。
まとめ
最後に、実家じまい費用のポイントを整理します。
- 共通費用は相続登記 + 残置物処分で 35〜100万円。選択肢に関係なく発生
- **「壊す」**は木造30坪で 150〜250万円。アスベスト・狭小道路で上振れ
- **「売る」**の最大コストは仲介手数料(売却額3%+6万円+税)。3000万円特別控除で譲渡益課税はゼロ化可能
- **「貸す」**は初期リフォーム 200〜500万円 + 月家賃の 5〜10% 管理委託
- **「住む」**は維持費 年33〜70万円。固定資産税軽減維持と特定空家回避のメリット大
- 補助金活用で解体費は1/3〜1/2に圧縮可能(事前申請必須)
実家じまいの最大の落とし穴は「何を選ぶか決めずに支出を始める」ことです。解体費200万円を払った後で「売却した方が良かった」と気付いても取り返せません。
「とりあえず業者に見積を取る」前に、4選択肢を横断比較しておくのが、結局のところ最大の費用最適化です。
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実家じまいの予算を、4選択肢で並べて比較
売る・貸す・住む・壊すの4選択肢の概算手残りを、12問5分でレンジ提示。
立地・築年数・補助金・税制優遇まで織り込んだ「最初の地図」をデータで作成します。
本記事は2026年5月時点の制度・標準的な相場感に基づきます。実際の費用は物件・地域・業者によって変動するため、必ず複数業者の見積と税理士試算で確定させてください。本記事は法的・税務的助言を目的としたものではありません。
実家を相続したら、まず「最初の地図」を
売る・貸す・住む・壊すの4選択肢を、12問5分で横断比較。
あなたの実家の場合、どの選択肢が最も合っているのかをデータで提示します。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 税務・法務・不動産取引に関する個別具体的な助言を行うものではありません。 個別のご事情に応じた判断は、税理士・司法書士・弁護士・宅地建物取引士等の有資格者にご相談ください。 また、法令・通達は本記事公開後に改正される可能性があります。最新情報は各官公庁のWebサイトをご確認ください。
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