家じまいくん
RESEARCH

2026年版 47都道府県別 相続放棄申述受理件数 ランキング

最高裁判所事務総局「司法統計年報 3 家事編」第9表 (別一95) 相続の放棄の申述の受理 を令和6年版・令和5年版の公式 PDF から実機抽出。47都道府県別の件数・前年比・ランキングを完全網羅しました。47県合計 = 全国総数(令和6年: 308,753件 / 令和5年: 282,785件)で完全一致を確認した嘘ゼロ運用データです。

公開: 2026年5月16日 | データ確認日: 2026-05-16 | 編集: 家じまいくん編集部

1. 全国概況:令和6年 308,753件で過去最高

最高裁判所事務総局「司法統計年報 3 家事編」第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数(全家庭裁判所)令和6年版・令和5年版を実機抽出して整理しました。全国の相続放棄申述受理件数は前年比 +25,968件(+9.18%)の急増で、令和元年(225,416件)からの5年間で +37.0% に達しています。

年度全国 相続放棄申述受理件数前年比
令和元年(2019年)225,416
令和2年(2020年)234,732+4.1%
令和3年(2021年)251,994+7.4%
令和4年(2022年)260,497+3.4%
令和5年(2023年)282,785+8.6%
令和6年(2024年)308,753+9.18%(過去最高)

出典: 令和6年 司法統計年報 家事編(PDF・約9MB)令和5年 司法統計年報 家事編(PDF・約4MB)(いずれも 2026-05-16 実機ダウンロード)

2. 都道府県別ランキング TOP10(件数 多い順・令和6年)

人口の多い大都市圏が上位を独占。TOP10 で全国の約 51% を占めます。

順位都道府県令和6年 件数令和5年 件数前年比地域別ページ
1東京都26,56924,965+6.42%東京都の地域別データ
2大阪府23,41922,753+2.93%大阪府の地域別データ
3神奈川県17,49315,831+10.50%神奈川県の地域別データ
4千葉県15,77314,349+9.92%千葉県の地域別データ
5愛知県15,02113,117+14.52%愛知県の地域別データ
6埼玉県14,82513,642+8.67%埼玉県の地域別データ
7兵庫県13,87613,365+3.82%兵庫県の地域別データ
8北海道13,82012,217+13.12%北海道の地域別データ
9福岡県12,45510,987+13.36%福岡県の地域別データ
10静岡県8,4978,477+0.24%静岡県の地域別データ

3. 前年比 増加率 TOP10(令和5→令和6)

地方部での増加率が突出。過疎・高齢化が進むエリアで相続放棄需要が急増しています。

順位都道府県前年比 増加率令和5年→令和6年増加件数
1鳥取県+27.00%1,5111,919+408
2沖縄県+24.65%3,0183,762+744
3徳島県+22.72%1,6332,004+371
4秋田県+21.57%2,8373,449+612
5青森県+21.39%4,1295,012+883
6奈良県+21.36%2,4813,011+530
7宮崎県+19.66%2,7013,232+531
8佐賀県+18.85%1,8462,194+348
9愛媛県+18.59%3,6104,281+671
10高知県+15.44%2,4542,833+379

4. 増加件数(絶対数)TOP10(令和5→令和6)

大都市圏での絶対数増加が顕著。人口規模の大きい都道府県ほど相続放棄の事案数も急増しています。

順位都道府県増加件数令和5年→令和6年前年比
1愛知県+1,90413,11715,021+14.52%
2神奈川県+1,66215,83117,493+10.50%
3東京都+1,60424,96526,569+6.42%
4北海道+1,60312,21713,820+13.12%
5福岡県+1,46810,98712,455+13.36%
6千葉県+1,42414,34915,773+9.92%
7埼玉県+1,18313,64214,825+8.67%
8青森県+8834,1295,012+21.39%
9群馬県+7755,1545,929+15.04%
10新潟県+7455,6456,390+13.20%

5. 47都道府県全件データ(北→南・令和6年)

司法統計年報 第9表 (別一95) を家庭裁判所別に実機抽出し、北海道は 札幌+函館+旭川+釧路 の4本部合算で都道府県別に集計しました。47県合計 = 308,753件で全国総数と完全一致を検証済みです。

都道府県件数(多い順 順位)令和6年 件数令和5年 件数前年比地域別ページ
北海道813,82012,217+13.12%北海道の地域別データ
青森県175,0124,129+21.39%青森県の地域別データ
岩手県294,0323,610+11.69%岩手県の地域別データ
宮城県194,8894,783+2.22%宮城県の地域別データ
秋田県313,4492,837+21.57%秋田県の地域別データ
山形県352,9592,731+8.35%山形県の地域別データ
福島県184,9134,657+5.50%福島県の地域別データ
茨城県117,9317,202+10.12%茨城県の地域別データ
栃木県234,7114,334+8.70%栃木県の地域別データ
群馬県155,9295,154+15.04%群馬県の地域別データ
埼玉県614,82513,642+8.67%埼玉県の地域別データ
千葉県415,77314,349+9.92%千葉県の地域別データ
東京都126,56924,965+6.42%東京都の地域別データ
神奈川県317,49315,831+10.50%神奈川県の地域別データ
新潟県136,3905,645+13.20%新潟県の地域別データ
富山県412,3522,312+1.73%富山県の地域別データ
石川県402,5982,846-8.71%石川県の地域別データ
福井県452,1731,968+10.42%福井県の地域別データ
山梨県422,2562,205+2.31%山梨県の地域別データ
長野県214,7994,479+7.14%長野県の地域別データ
岐阜県244,7084,183+12.55%岐阜県の地域別データ
静岡県108,4978,477+0.24%静岡県の地域別データ
愛知県515,02113,117+14.52%愛知県の地域別データ
三重県254,5874,385+4.61%三重県の地域別データ
滋賀県392,6052,421+7.60%滋賀県の地域別データ
京都府146,0215,615+7.23%京都府の地域別データ
大阪府223,41922,753+2.93%大阪府の地域別データ
兵庫県713,87613,365+3.82%兵庫県の地域別データ
奈良県343,0112,481+21.36%奈良県の地域別データ
和歌山県323,3823,296+2.61%和歌山県の地域別データ
鳥取県471,9191,511+27.00%鳥取県の地域別データ
島根県432,2212,057+7.97%島根県の地域別データ
岡山県204,8034,419+8.69%岡山県の地域別データ
広島県127,2516,693+8.34%広島県の地域別データ
山口県224,7684,426+7.73%山口県の地域別データ
徳島県462,0041,633+22.72%徳島県の地域別データ
香川県382,7332,665+2.55%香川県の地域別データ
愛媛県264,2813,610+18.59%愛媛県の地域別データ
高知県372,8332,454+15.44%高知県の地域別データ
福岡県912,45510,987+13.36%福岡県の地域別データ
佐賀県442,1941,846+18.85%佐賀県の地域別データ
長崎県284,1393,755+10.23%長崎県の地域別データ
熊本県274,2083,776+11.44%熊本県の地域別データ
大分県362,9272,789+4.95%大分県の地域別データ
宮崎県333,2322,701+19.66%宮崎県の地域別データ
鹿児島県165,0234,456+12.72%鹿児島県の地域別データ
沖縄県303,7623,018+24.65%沖縄県の地域別データ

注: 石川県のみ前年比減少(-8.71%)。令和6年能登半島地震(2024年1月1日発生)による家庭裁判所機能・申述環境への影響の可能性があり、単純な「需要減」とは解釈できない点に留意してください。

6. 法令根拠(民法・家事事件手続法)

相続放棄の法的位置付けは民法 第915条〜第940条 + 家事事件手続法 別表第一95項 に明文化されています。e-Gov 公式条文から正確に整理しました。

熟慮期間(3か月)民法 第915条
「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」(民法第915条第1項本文)。3か月の熟慮期間内に判断できない場合は家庭裁判所への期間伸長申立てが可能(同条同項ただし書)。

出典: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

申述方式民法 第938条
「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」(民法第938条)。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所への申述書提出が必須。電話・口頭・通知書のみでは法的効果は発生しない。

出典: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

効果(初めから相続人でなかったとみなす)民法 第939条
「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」(民法第939条)。プラス財産もマイナス債務も承継しない一方、次順位の相続人(兄弟姉妹等)に相続権が移転するため、家族間の連絡調整が必須。

出典: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

家事審判事件として家庭裁判所が管轄家事事件手続法 別表第一95項
相続の放棄の申述の受理は家事事件手続法 別表第一の95項に掲げる事項として家庭裁判所の専属管轄。司法統計年報の第9表 (別一95) として家庭裁判所別件数が公表されている。

出典: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

7. 手続き実務(裁判所公式・6項目)

家庭裁判所への相続放棄申述の実務情報を、裁判所公式(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/)から正確に整理しました。

申述期間
自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法第915条第1項本文)。期間伸長の申立てが家庭裁判所に対して可能(同条同項ただし書)。

出典: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

申述先
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法 第201条)。被相続人と申述人が遠方に住んでいる場合でも、被相続人の住所地家庭裁判所への申述が必須。

出典: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

手数料
収入印紙800円(申述人1人につき)+ 連絡用郵便切手(金額は裁判所ごとに異なる)。収入印紙は家庭裁判所では販売していないため事前に郵便局等で購入が必要。

出典: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

必要書類(共通)
相続放棄申述書 / 被相続人の住民票除票または戸籍附票 / 申述人の戸籍謄本 / 被相続人の死亡記載のある戸籍謄本(除籍謄本)。相続順位(第二順位の親、第三順位の兄弟姉妹)の場合は被相続人の出生〜死亡までの一連の戸籍謄本など追加書類が必要。

出典: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

申述人
相続人本人。未成年者・成年被後見人の場合は法定代理人(親権者・後見人)が代理。法定代理人と本人の利益相反がある場合は特別代理人の選任が必要。

出典: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

受理後の効果
相続放棄受理通知書が家庭裁判所から送付される。受理通知書または相続放棄申述受理証明書(450円/通)が、債権者・登記実務上「相続人ではない」ことを示す公的証明として機能する。一度受理された相続放棄は、原則として撤回不可(民法第919条第1項)。

出典: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

8. 3つの選択肢比較(単純承認 vs 限定承認 vs 相続放棄)

相続発生時、相続人は民法上3つの選択肢から1つを選ぶ立場にあります。司法統計 令和6年では限定承認 745件 vs 相続放棄 308,753件と、相続放棄が圧倒的多数派ですが、限定承認も適切なケースでは強力な選択肢になります。

選択肢期限手続き効果向くケース注意点
単純承認3か月以内に何もしない / 相続財産を処分するなど(民法第921条)家庭裁判所への申述は不要(民法第920条)プラス財産もマイナス債務も全て承継する債務超過の可能性がなく、相続財産の内容が把握できているケース「相続財産の処分」(民法第921条第1号)に該当する行為を3か月以内に行うと、相続放棄や限定承認の選択肢を失う(法定単純承認)。被相続人名義の預金口座から葬儀費用を引き出す行為等は判例上の解釈が分かれるため要注意。
限定承認3か月以内(民法第915条・第924条)相続人全員が共同で家庭裁判所に申述(民法第923条)。財産目録の作成・添付が必要。プラス財産の範囲でのみマイナス債務を承継。残債務は放棄。債務超過の可能性はあるが、自宅不動産など承継したい資産がある場合の中間的選択肢司法統計 令和6年の利用件数は限定承認 745件 / 相続放棄 308,753件と圧倒的に少数派。相続人全員が同意しない場合は選択不可で、税務上「みなし譲渡所得課税」(所得税法第59条)が発生するため使い勝手は限定的。
相続放棄3か月以内(民法第915条)相続人各人が単独で家庭裁判所に申述(民法第938条)。収入印紙800円。初めから相続人でなかったものとみなされる(民法第939条)明らかな債務超過 / 相続人が遠方で関わりたくない / 兄弟姉妹で1人に集中させたい等次順位相続人(第一順位の子 → 第二順位の親 → 第三順位の兄弟姉妹・甥姪)に相続権が移転するため、放棄を考えている場合は家族・親族への事前連絡が事実上必須。連絡なしに放棄すると、次順位の親族が突然「被相続人の債務を承継する立場」になる。

9. 相続放棄が増加している5つの構造要因

令和元年(225,416件)から令和6年(308,753件)の5年間で +37.0% の急増。公的データから読み取れる構造要因を整理しました。

空き家・負動産の増加
令和5年住宅・土地統計調査(2024年9月25日 確報集計公表)で全国の空き家総数は 9,001,600戸(過去最高)・空き家率 13.8% に到達。負動産(処分困難な不動産)を抱えたまま死亡するケースが増え、相続人が「プラスにならない実家」を放棄する判断が増加。

出典: https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html

民法改正(2023年4月施行・相続財産清算人 等)
2023年4月施行の民法・不動産登記法改正により、相続放棄をした者が「相続財産清算人」が選任されるまで「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって財産管理義務を負う旨が明確化(民法第940条第1項)。改正前後の運用整理が周知され、放棄判断のハードルが下がった。

出典: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

相続登記義務化(2024年4月)
2024年4月施行の改正不動産登記法により相続登記が義務化(不動産登記法第76条の2)。被相続人名義のまま放置していた不動産も「相続を知ってから3年以内」に登記する義務が発生。登記コストや遺産分割協議の手間を避けたい層が相続放棄を検討するようになった。

出典: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

特定空家・管理不全空家 認定の制度化(2023年12月)
2023年12月施行の空家対策特別措置法 改正で「管理不全空家」制度が新設。固定資産税の住宅用地特例(1/6軽減)の対象から除外され、税額が実質約6倍となるリスクが顕在化。「実家を放置するほど税負担が増す」構造が明らかになり、放棄判断が促された。

出典: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000034.html

高齢化・「相続→次の相続」連続発生
厚生労働省 人口動態統計の年間死亡数は2024年で約160万人(戦後最多水準)と推移。被相続人が高齢で配偶者も高齢、子も既に60代といった「老老相続」「数次相続」が一般化。1人当たりの相続発生回数増加に伴い、判断疲れから「放棄」を選ぶケースが増えた。

出典: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

10. よくある質問(FAQ 36問)

A. 制度の基礎

Q. 相続放棄とは何ですか?
A. 民法第938条に基づき、相続人が家庭裁判所への申述により「相続を承認しない」意思表示を行う制度です。受理されると民法第939条により「初めから相続人とならなかったもの」とみなされ、プラス財産(預貯金・不動産等)もマイナス債務(借金・連帯保証等)も一切承継しません。司法統計年報 家事編 第9表(令和6年)によると全国で年間 308,753件の申述が受理されています。
Q. 相続放棄と「遺産分割協議で何ももらわない」は同じですか?
A. 全く違います。遺産分割協議で取り分ゼロにしても、相続人としての地位(債務承継含む)は残ります。被相続人に隠れた債務(連帯保証等)が後から発覚した場合、その債務を承継する立場のままです。一方、家庭裁判所の相続放棄は民法第939条により「初めから相続人でなかった」扱いとなり、債務の承継リスクから完全に切り離されます。
Q. 「相続放棄」「限定承認」「単純承認」の3択はどう選べばいい?
A. 単純承認(手続き不要・全承継)→明らかに資産超過で内容も把握できているケース。限定承認(家裁申述・全相続人共同必要)→債務超過の可能性があるが自宅など承継したい資産があるケース。相続放棄(家裁申述・各自単独)→明らかな債務超過 / 関わりたくない / 兄弟で1人に集中させたい場合。司法統計 令和6年では限定承認 745件 vs 相続放棄 308,753件で、相続放棄が圧倒的多数派です。
Q. 相続放棄をすると財産は誰のものになる?
A. 相続放棄をした者は「初めから相続人でなかった」扱いとなるため(民法第939条)、相続権は次順位の相続人に移ります。第一順位(子)が全員放棄→第二順位(直系尊属:親)→第三順位(兄弟姉妹・代襲分は甥姪まで)の順。全員が放棄して相続人が誰もいなくなった場合、被相続人の相続財産は最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。
Q. 相続放棄しても生命保険金は受け取れますか?
A. 受取人が指定された生命保険金は「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」とされ(最判昭和40年2月2日 等)、相続放棄をしても受取が可能です。ただし、相続税法上の「みなし相続財産」として相続税の課税対象となる点と、相続放棄者は500万円×法定相続人数の非課税枠を使えない点には注意が必要です(相続税法第12条第1項第5号)。
Q. 相続放棄しても遺族年金は受け取れますか?
A. 遺族年金は国民年金法・厚生年金保険法に基づく「遺族固有の権利」とされ、相続財産ではないため相続放棄をしても受給可能です(最判平成10年4月10日 等)。同様に、未支給年金(被保険者本人が亡くなる前に受給権が発生していた年金)も受給者固有の権利として受取可能です。

B. 期限・期間

Q. 相続放棄の期限は何か月以内?
A. 民法第915条第1項本文により「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」が原則です。「相続の開始を知った時」は、被相続人の死亡日ではなく、自分が相続人になったことを認識した時点を指します。例えば第一順位の子が全員放棄→第二順位の親に相続権が移った日が、親にとっての3か月起算点となります。
Q. 3か月では判断できません。期間延長は可能?
A. 可能です。民法第915条第1項ただし書に基づき「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を家庭裁判所に申し立てれば、調査に必要な期間(通常3か月)の延長が認められます。延長申立も3か月の熟慮期間内に行う必要があります。申立件数は司法統計 第9表 (別一96) で公表されており、令和6年は全国 4件と少数事例ですが、延長の実需は財産調査が困難なケース等で発生しています。
Q. 3か月を過ぎてから債務が発覚しました。今からでも放棄できる?
A. 原則として3か月を経過すると放棄不可です。ただし、最判昭和59年4月27日は「相続財産が全く存在しないと信ずるについて相当な理由がある」場合、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算するとし、例外的に熟慮期間を実質的に延長する解釈を示しました。実務上は司法書士・弁護士に相談の上、家庭裁判所への申述書に経緯を詳述して受理を求めるルートが取られます。
Q. 被相続人の死亡日と相続放棄の起算日は同じ?
A. 通常は同じですが、被相続人と疎遠で死亡を知らなかった、または第一順位相続人の放棄により次順位として相続権が移った等のケースでは、起算日は「自分が相続人になったことを知った日」になります(民法第915条第1項本文の「自己のために相続の開始があったことを知った時」)。
Q. 葬儀費用の支払いは「相続承認」になりますか?
A. 民法第921条第1号が定める「相続財産の処分」に該当するかどうかは判例上の解釈が分かれます。被相続人の預金を引き出して葬儀費用に充てる行為について、社会通念上相当な範囲の葬儀費用は処分にあたらないとする裁判例もありますが、明確な線引きはありません。相続放棄を検討するなら、自己資金から葬儀費用を出し、領収書を保存する形で対応するのが安全です。専門家への相談を推奨します。

C. 手続き・費用

Q. 相続放棄の手数料はいくら?
A. 裁判所公式(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)によると、収入印紙800円(申述人1人につき)+ 連絡用郵便切手(金額は裁判所ごとに異なる)が必要です。収入印紙は家庭裁判所では販売していないため、事前に郵便局等で購入する必要があります。司法書士・弁護士に依頼する場合は別途報酬(相場 3万〜10万円)が発生します。
Q. どこの家庭裁判所に申述する?
A. 家事事件手続法第201条により、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が専属管轄です。被相続人と申述人が遠方に住んでいる場合でも、被相続人の住所地家庭裁判所への申述が必須です。家庭裁判所の管轄区域は https://www.courts.go.jp/saiban/tetuduki_kazi/kazi_jiken/index.html から検索できます。
Q. 必要書類は何ですか?
A. 裁判所公式の標準書類は ①相続放棄申述書 ②被相続人の住民票除票または戸籍附票 ③申述人の戸籍謄本 ④被相続人の死亡記載のある戸籍謄本(除籍謄本)です。相続順位(第二順位の親、第三順位の兄弟姉妹等)の場合は被相続人の出生〜死亡までの一連の戸籍謄本など追加書類が必要となります。詳細は申述先の家庭裁判所の公式案内で確認してください。
Q. 自分で手続きできる?司法書士・弁護士に依頼すべき?
A. 標準ケースは本人申述で対応可能です。戸籍収集と申述書記入が中心で、収入印紙800円のみで完結します。司法書士・弁護士への依頼が推奨されるのは ①3か月を過ぎて熟慮期間の例外適用を求める場合 ②債権者から催告を受けている場合 ③相続人多数で全員放棄の調整が複雑な場合 ④債務の存否調査が必要な場合 ⑤裁判所からの照会書回答に専門的判断が必要な場合 等です。
Q. 受理されたらどうなる?証明書はもらえる?
A. 家庭裁判所から相続放棄受理通知書が送付されます。さらに、債権者や登記実務で「相続人ではない」ことを公的に証明する必要があるときは、相続放棄申述受理証明書(450円/通)を別途請求できます。証明書は被相続人の債権者・遺産分割の他相続人・遺産関連の登記申請等で求められる重要書類です。

D. 効果・撤回

Q. 一度受理された相続放棄は撤回できますか?
A. 原則として撤回不可です(民法第919条第1項)。例外として、詐欺・強迫等による意思表示の取消し事由がある場合のみ、家庭裁判所の手続きを通じて取消しの主張が可能です(民法第919条第2項)。ただし、立証ハードルは高く、実務上は熟慮期間内に慎重に判断する必要があります。
Q. 相続放棄をすると親族関係はどうなる?
A. 親族関係(戸籍上の続柄)は変わりません。あくまで「相続に関しては」初めから相続人でなかったとみなされる効果のみです(民法第939条)。被相続人の祭祀承継(墓・仏壇)、遺族年金、生命保険金(受取人指定がある場合)等は相続放棄の影響を受けません。
Q. 放棄後も実家の管理義務はある?
A. 2023年4月施行の民法改正により、相続財産を「現に占有」している相続人は、相続財産清算人が選任されるまで「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって財産管理義務を負うことが明確化されました(民法第940条第1項)。実家の鍵を持っている / 同居していた等の事情がある場合は、放棄後も最低限の管理(雨漏り点検等)が必要です。完全に責任を切り離すには、相続財産清算人の選任申立(収入印紙800円+予納金 数十万円〜100万円超)を検討します。
Q. 全員が放棄したら不動産はどうなる?
A. 相続人全員が放棄して相続人が存在しなくなった場合、利害関係人(債権者等)または検察官の請求により家庭裁判所が相続財産清算人を選任します(民法第952条)。清算人は財産を換価して債権者に弁済し、残余財産があれば特別縁故者への分与(民法第958条の2)または国庫帰属(民法第959条)の手続きを進めます。空き家の場合は売却 / 解体 / 自治体への寄付打診等が清算人の判断で行われます。

E. 47県データ・統計

Q. 相続放棄件数が一番多い都道府県は?
A. 司法統計年報 家事編 第9表(令和6年・最新公表値)から実機抽出した結果、TOP10は 東京都 26,569件 / 大阪府 23,419件 / 神奈川県 17,493件 / 千葉県 15,773件 / 愛知県 15,021件 / 埼玉県 14,825件 / 兵庫県 13,876件 / 北海道 13,820件 / 福岡県 12,455件 / 静岡県 8,497件。人口の多い大都市圏が上位を占めます。最少は 鳥取県 1,919件。
Q. 前年比で最も増加率が高かった都道府県は?
A. 前年比(令和6年 vs 令和5年)の増加率 TOP5 は ①鳥取県 +27.00%(1,511→1,919件)②沖縄県 +24.65%(3,018→3,762件)③徳島県 +22.72%(1,633→2,004件)④秋田県 +21.57%(2,837→3,449件)⑤青森県 +21.39%(4,129→5,012件)。地方部での増加率が高く、過疎・高齢化が進むエリアで相続放棄需要が伸びている構図です。一方、46都道府県で前年比増・1都道府県(石川県 -8.71%・2,846→2,598件)のみ減少していますが、令和6年能登半島地震(2024年1月1日発生)による家庭裁判所機能・申述環境への影響の可能性があり、単純な「需要減」とは解釈できません。
Q. 増加件数(絶対数)が最も多かった都道府県は?
A. 増加件数 TOP5 は ①愛知県 +1,904件(13,117→15,021件)②神奈川県 +1,662件(15,831→17,493件)③東京都 +1,604件(24,965→26,569件)④北海道 +1,603件(12,217→13,820件)⑤福岡県 +1,468件(10,987→12,455件)。大都市圏での絶対数増加が際立ち、人口規模の大きい都道府県ほど相続放棄の事案数も急増しています。
Q. 全国で何件くらい相続放棄が発生している?
A. 令和6年(2024年)の全国の相続放棄申述受理件数は 308,753件で過去最高を更新しました。前年(令和5年=2023年)の 282,785件から +25,968件(+9.18%)の増加。5年前の令和元年(2019年)225,416件と比較すると +37.0%。10年単位で見ても増加傾向は止まりません。背景は空き家・負動産の増加(令和5年 全国空き家率 13.8%・過去最高)、2023年4月施行の民法改正、2024年4月の相続登記義務化等が影響していると見られます。
Q. 司法統計の数字はどこで確認できる?
A. 最高裁判所事務総局「司法統計年報 3 家事編」が一次データです。最新版(令和6年)は https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12787.pdf からダウンロード可能(91ページ・PDF・約9MB)。第2表(全家庭裁判所合計)と第9表(家庭裁判所別)に相続放棄申述受理件数(別一95)が掲載されています。
Q. 都道府県別データの扱いで注意点は?
A. 司法統計年報の第9表は「家庭裁判所別」の集計で、家庭裁判所と都道府県は1対1対応ですが、北海道のみ4本部(札幌・函館・旭川・釧路)に分かれているため都道府県別では合算する必要があります。本リサーチでは北海道の4本部合算値(札幌8,314+函館1,561+旭川1,707+釧路2,238=13,820件)を採用しています。また、申述受理件数は「申述人ベース」で「相続事案ベース」ではない点に注意(1つの相続で複数の相続人が放棄すると、件数は相続人数分カウントされる)。

F. ケース別判断

Q. 実家を相続したくない場合、相続放棄が一番ですか?
A. 「実家だけ」を選択的に放棄することは制度上できません(民法第939条による全財産放棄)。預貯金等のプラス財産も全て承継しないため、預貯金が多い場合は損になります。代替案として ①遺産分割協議で他相続人に承継してもらう ②不要な実家のみ自治体への寄付打診(相続後・受入率は低い)③相続後に解体+土地売却で換価 ④相続土地国庫帰属法(2023年4月施行)による国庫帰属申請 等を選択肢として比較してください。家じまいくん診断で4選択肢を中立比較できます。
Q. 借金の方が多そうな場合、すぐ放棄すべき?
A. 急がず、被相続人の信用情報を確認するのが先決です。①信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求で借入・保証履歴を確認 ②被相続人の自宅で郵便物(請求書・督促状)を保存 ③共済組合・健康保険組合への確認(連帯保証履歴)④国税庁・地方税の滞納確認 などを3か月の熟慮期間内に並行実施。それでも判断が間に合わない場合は民法第915条第1項ただし書の期間伸長申立を活用します。
Q. 兄弟で1人に集中させたい場合、相続放棄が使える?
A. 使えます。実家を兄が単独で承継したい場合、他の兄弟全員が相続放棄→兄が単独相続という設計が可能です。ただし注意点は ①親(第二順位)が存命の場合、子全員放棄で相続権が親に移るため親も放棄手続きが必要 ②兄弟姉妹(第三順位)まで連鎖する可能性 ③兄1人だけで債務まで負うリスク。遺産分割協議で「兄が全て取得・他は0」とする方が、債務リスクの観点では安全な場合もあります。専門家相談を推奨します。
Q. 遠方に住んでいて関わりたくない実家、放棄すべき?
A. 判断には ①不動産の市場価値(売却で正味プラスになるか)②管理コスト(固定資産税・草刈り・近隣トラブル)③税制特例(3000万円特別控除・取得費加算)の活用余地 を総合比較する必要があります。家じまいくん診断(12問5分・無料)で「売る・貸す・住む・壊す」の4選択肢に「相続放棄」を加えた5択を中立比較できます。明らかな債務超過でない限り、相続放棄前に資産価値の試算を必ず実施してください。
Q. 孫(代襲相続人)も相続放棄できる?
A. 可能です。代襲相続人(民法第887条第2項)も相続人として独自の相続放棄権を有します。代襲相続人にとっての3か月起算点は、被代襲者(親)の死亡を知った日ではなく、被相続人(祖父母)の相続が開始したことを知った日です。未成年の孫の場合は親権者または特別代理人による代理申述となります。

G. 家じまいくん診断・関連リソース

Q. 相続放棄か遺産分割か、決められません
A. 家じまいくんの「無料診断」(/diagnose)で12問5分で「売る・貸す・住む・壊す」の4選択肢を中立比較できます。「相続放棄」は5番目の選択肢として、明らかな債務超過のケースや継続的な管理コストが見合わないケースで提案します。判断材料となる空き家率・解体相場・譲渡所得税の特例等は関連リサーチ全7本で網羅しています。
Q. 相続放棄と関連する税制特例を知りたい
A. 相続放棄をすると相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)の計算でも「初めから相続人でなかった」扱いとなり(民法第939条)、放棄者を除いた人数で再計算します。一方、相続税法第15条第2項により基礎控除の計算上は放棄がなかったものとして法定相続人数を維持する規定もあり、税法と民法で扱いが分かれます。詳細は「2026年版 相続不動産 譲渡所得税 完全ガイド」(リサーチ第5弾)で整理しています。
Q. 家じまいくんで相続放棄の手続き代行はできる?
A. 代行は行いません。家じまいくんは「相続不動産の意思決定を中立に支援する診断+情報サイト」であり、税理士法・弁護士法・宅建業法の規制を遵守しています。相続放棄の具体的な申述手続きは ①自分で家庭裁判所に申述(標準ケース)②司法書士へ依頼(書類作成代行・相場3-5万円)③弁護士へ依頼(複雑ケース・債権者対応含む・相場5-10万円)から選択してください。
Q. 47県別のランキングは何に使える?
A. ①不動産業者・士業の地域マーケティング判断材料(自社エリアでの需要規模把握)②メディア・記者の地域記事ネタ(「○○県で相続放棄が前年比△△%増」型の報道)③相続関連サービスの地域進出判断 ④相続実家対策の地域別差を把握したい個人 等。本データは出典 URL を全て明示しており、転載・引用は出典明記の上自由に行えます(一次データは公的統計・著作権なし)。
Q. リサーチ第7弾と他のリサーチの違いは?
A. 本リサーチは家じまいくん リサーチ 通算7本目の「相続放棄」フォーカス版で、被リンク磁石としてメディア・士業ブログからの引用獲得を狙っています。関連リサーチは ①第1弾 全国空き家データ(akiya-japan-2026)②第2弾 相続実家100問(sozoku-jikka-100-questions-2026)③第3弾 4選択肢比較(sozoku-4-choices-2026)④第4弾 解体相場+47県補助金(akiya-kaitai-souba-2026)⑤第5弾 譲渡所得税ガイド(souzoku-fudosan-jouto-tax-2026)⑥第6弾 賃貸転用ガイド(chintai-tenyou-2026)。7本セットで「相続実家の全選択肢」をカバーしています。

11. 出典一覧(2026-05-16 確認)

一次(公的統計・法令)

裁判所・法務省 公式案内

関連 公的統計

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本リサーチは家じまいくん リサーチ 第7弾。相続実家の意思決定に必要な視点を、全7本のリサーチで網羅しています。

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4選択肢 手残り簡易比較(ミニツール) 取得費加算特例 計算(ミニツール) 小規模宅地特例 適用判定(ミニツール) 実家じまいの費用相場(4選択肢コラム)

本リサーチは 2026-05-16 時点の司法統計(最新公表値=令和6年版)と法令に基づきます。司法統計の数値は公表後に異同訂正が生じる可能性があります(最高裁判所「司法統計年報」利用上の注意 (5) 参照)。相続放棄の具体的な判断・手続きは、必ず司法書士・弁護士などの有資格者にご相談ください。本記事は法的助言を目的としたものではありません。